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東京地方裁判所 平成7年(ワ)6409号 判決

原告

三井信託銀行株式会社

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

樋口俊二

五百田俊治

被告

住銀ファイナンス株式会社

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

定塚脩

主文

一  被告は原告に対し、九三〇万一一一三・五九ドル(米国ドル)及び内金七一九万八一二七・五八ドルに対する平成七年六月二七日から支払済みまで年一四パーセントの割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

三  この判決は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

主文と同旨

第二  事案の概要

原告が被告に対して保証債務の履行を請求するのに対し、被告が保証契約の詐欺による取消し及び原告の債務不履行(報告義務違反)に基づく解除を主張して争う事案。被告の右主張の当否が争点である。

一  前提となる事実ないし背景事情

(≪証拠省略≫、証人Cの証言及び弁論の全趣旨によって認める。)

1  アメリカ合衆国ハワイ州オアフ島において、不動産業者であるDが必要な範囲の借地権を買収し、その土地上に地上三八階建ての建物(延べ床面積約一二〇〇〇坪)を建設し、高級コンドミニアム(個数一八八)及び商業スペースとして分譲することが計画された。その事業主体として、パートナーシップ(ワイキキ・ランドマーク・パートナーズ。以下、WLPと略記する。)が組織され、Dが主宰するaグループがジェネラルパートナー及びリミテッドパートナーとなり、日本から伊藤忠商事等がリミテッドパートナーとして参加した。

2  原告は右事業の所要資金をWLPへ貸し付ける主力銀行として参加したが、国内の金融機関に呼びかけたり、情報を知って参加を希望する金融機関もあって、結局、融資団(与信団)は原告外一〇社、原告の損失を保証する保証人団は被告外九社となった。

金融機関が右事業に参加する形態は、与信団として参加する形態と保証人団として参加する形態の二種類があるが、前者は借主からの利息の支払という利益を得ることを目的とするが、貸付自体についてのリスクを負担し、後者は与信団が借主から支払を受けた利息の中から保証料(年一パーセント)を受け取ることを目的とするが、与信団のために借主の債務を保証することによるリスクを負担することになる。

3  WLPは一九九〇年(平成二年)、建設業者であるチャールズ・パンコウ・ビルダーズ・リミテッドへ建物の建築を発注し、一九九三年(平成五年)三月工事は完成したが、日米両国における急速な不動産景気の衰退により、分譲住宅の買手がつかない状況となり、最終的には、貸主は貸付債権を売却せざるを得ず、損失を被る結果に終わった。

保証人団一〇社のうち、被告と株式会社エヌ・ファ以外は保証債務を履行済みである。なお、株式会社エヌ・ファは債務超過に陥り、任意整理中である。

二  請求原因事実

(証拠を摘示しない事実は当事者間に争いがないもの。その余の事実は掲記の証拠及び弁論の全趣旨によって認める。)

1  原告は、平成二年九月二八日にWLP(以下「借主」ともいう。)との間で締結した左記内容のローン契約(以下、「本件ローン契約」という。)に基づき、WLPに対し、コンドミニアム及び商業スペースの開発資金として、平成五年八月一八日までに総額八五〇〇万ドル(米国ドル。ドルの表示につき、以下同じ。)を数十回に分割して貸し付けた。なお、原告を含む融資団による貸付総額は一億五五〇〇万ドルである。(≪証拠省略≫)

(一) 元本弁済期 次の(1)又は(2)の早い方

(1) 契約後五年後の直前の利払い日(平成七年七月二五日)

(2) 工事完成日から三年後の直後の利払い日

(二) 利息 変動利率制

約定による変動利率基準は、融資日ないし利息書替日の二営業日前のLIBOR(ロンドン銀行間取引レート)に一・四五パーセントを加えた率。ただし、一年を三六〇日として日割り計算する。

(三) 遅延損害金

元本及び未払利息に対して付する。その割合は、前記(二)のレート中、最も高い適用レートに二パーセントを加えた率。ただし、一年を三六〇日として日割り計算する。本件では、平成二年一二月一九日から平成三年一月二五日までの適用レートであった一〇・〇一五九九パーセントに二パーセントを加えた一二・〇一五九九パーセント。

(四) 約定料(未実行残高準備のための手数料) 〇・二パーセント

(五) 利息弁済期 一月、四月、七月及び一〇月の二五日(二五日が土日又は祝祭日のときはその翌日。なお、平成五年七月二五日は日曜日)

(六) 期限の利益喪失の特約

借主が右の支払を一回でも怠ったときは、原告の請求により期限の利益を失い、原告は元本その他の債権を即時に請求することができる。

2  原告と被告は、平成二年九月二八日、借主の債務の支払を保証するため、左記内容の保証契約(以下「本件保証契約」という。)を締結した。

(一) 被告は原告に対し、原告が本件ローン契約に基づき借主に貸し付けた元本八五〇〇万ドルのうち元本一〇〇〇万ドルを限度として借主の債務の支払を保証し、借主に債務不履行があったときは、原告が借主に対して有する残債権のうち一七分の二(八五〇〇万分の一〇〇〇万)の割合により算出される金額を請求後直ちに支払う。

(二) 原告が借主に対して期限の利益喪失の宣言をする場合には、被告に事前に通知し、被告の承認を得るか又は被告と十分に協議する。

(三) 原告は被告に対し、保証の対価として、本件ローン契約に基づく貸付債権の一七分の二につき、年一パーセントの割合による保証料を支払う。

3  WLP(借主)は、次のとおり、利息弁済期に利息及び約定料の支払を怠った(金額は、原告を含む全融資団に対して負担する額である)。(≪証拠省略≫)

(一) 平成五年七月二六日の利息弁済期に利息一八〇万三四四八・七七ドル及び約定料五八四・三五ドル

(二) 平成五年一〇月二五日の利息弁済期に利息一八六万一七九三・六七ドル及び約定料一七〇・〇九ドル

(三) 平成六年一月二五日の利息弁済期に利息一九一万五〇四・二七ドル及び約定料三〇・三六ドル

4  原告は借主に対し、平成六年二月二四日、本件ローン契約が認めている通信手段であるFAXにより、期限の利益喪失の通知をし、右通知は同日、被告に到達した(≪証拠省略≫)。

右通知に先立ち、原告は被告に対し、平成六年二月三日到達の書面により、約定による協議を申し入れたが、被告は協議に応じなかった。すなわち、被告は約定に基づく権利を放棄したので、借主が期限の喪失した平成六年二月二四日、被告の原告に対する債務の弁済期が到来した。

原告は被告に対し、平成六年三月一四日到達の書面により、九九九万六一七〇・八五ドル(原告の借主に対する残債権八四九六万七四五二・二二ドルの一七分の二)の支払を請求した。

5  WLPに対する融資団は残債権の売却による債権の回収を図っていたが、平成六年五月二五日、TCW・ASSET・MANAGEMENT・COMPANYとの間で債権売却契約が成立し、同年六月二六日売却が完結し、その結果、WLPに対する本件ローン契約に基づく債権の回収不能額が確定した(≪証拠省略≫、証人Cの証言)。

原告の回収不能確定金額は、以下のとおりである(別紙計算書≪省略≫参照)。

(一) 元本 七一九万八一二七・五八ドル

(二) 未払利息合計 三九万八八七七・二五ドル(≪証拠省略≫)

(内訳)

〔未払利息の算出基準〕 借主の全融資団に対して負担すべき利息額の一億五五〇〇万分の八五〇〇万の一七分の二で算出される金額である。

(1) 平成五年七月二六日支払期日到来分

対象元本 九九二万五四二九・二四ドル

利率   四・六三七五パーセント(四月二二日のレート)

期間   平成五年四月二六日から平成五年七月二五日まで

利息額  一一万六三五一・五三ドル

(2) 平成五年一〇月二五日支払期日到来分

対象元本 九九二万五四二九・二四ドル

利率   四・七六二五パーセント(七月二一日のレート)

期間   平成五年七月二六日から平成五年一〇月二四日まで

①利息額 一一万九四八七・六九ドル

対象元本 七万七四一・六一ドル

利率   四・七パーセント(八月一六日のレート)

期間   平成五年八月一八日から平成五年一〇月二四日まで

②利息額 六二八・〇三ドル

①及び②の合計利息額 一二万一一五・七二ドル

(3) 平成六年一月二五日支払期日到来分

対象元本 九九九万六一七〇・八五ドル

利率   四・八二五パーセント(一〇月二一日のレート)

期間   平成五年一〇月二五日から平成六年一月二四日まで

利息額  一二万三二五八・三四ドル

(4)平成六年二月二四日支払期日到来分

対象元本 九九九万六一七〇・八五ドル

利率   四・七パーセント(一月二一日のレート)

期間   平成六年一月二五日から平成六年二月二三日まで

利息額  三万九一五一・六六ドル

(三) 遅延損害金

各起算日から平成七年六月二六日まで年一二・〇一五九九パーセントの割合による金員。ただし、一年を三六〇日として日割り計算する。

(1) 一六二万四八七四ドル

元本九九九万六一七〇・八五ドルにつき、起算日平成六年二月二五日

(2) 二万七一八四・八七ドル

未払利息一一万六三五一・五三ドル(前記(1))につき、起算日平成五年七月二七日

(3) 二万四四一五・九八ドル

未払利息一二万一一五・七二ドル(前記(2))につき、起算日平成五年一〇月二六日

(4) 二万一二六九・八二ドル

未払利息一二万三二五八・三四ドル(前記(3))につき、起算日平成六年一月二六日

(5) 六三六四・〇九ドル

未払利息三万九一五一・六六ドル(前記(4))につき、起算日平成六年二月二五日

合計 一七〇万四一〇八・七六ドル

(四) 以上(一)ないし(三)の合計は九三〇万一一一三・五九ドルとなる。

なお、平成七年六月二七日から支払済みまでの年一四パーセントの割合による遅延損害金の請求は、原告と被告との銀行取引約定(≪証拠省略≫)に基づく利率である。

三  被告の主張

1  本件保証契約の詐欺による取消し

平成二年六月ころ、原告の外国営業部営業第二課長Eは被告会社を数回訪れて、被告が本件プロジェクトに参加することを勧誘し、また、原告の海外営業開発室Fからも再三の説明がされた。両名の説明は、原告は数年前から伊藤忠商事株式会社が推進する大型不動産開発案件に対する融資業務を積極的に展開し非常にうまく行っている、本件プロジェクトも伊藤忠商事が責任をもって販売する体制になっているというものであり、被告は、本件プロジェクトが全く心配のないもので、極めて危険性の少ないものであるという再三の説明を信じて本件保証契約を締結した。しかしながら、新聞でも報じられていたように(平成二年一二月二七日付け日経産業新聞。≪証拠省略≫)、平成二年七月の時期には、ハワイオアフ島の高級住宅地では、高額物件の売れ残りが急増している時期であり、現地で大規模な不動産開発を行っていた伊藤忠商事及びこれを金融面で全面的に支援していた原告は、そのような事実を十分に承知していたにもかかわらず、これを秘匿し、被告を欺罔して本件保証契約を締結させたものである。

被告は、後記のとおり、平成五年六月一六日に原告に到達した書面により本件保証契約を解除する旨の意思表示をしたが、右意思表示には詐欺による取消しの意思表示も含まれる。仮にそうでないとしても、原告は平成八年六月五日の本件口頭弁論期日において、右取消しの意思表示をした。

2  本件保証契約の解除

本件保証契約には、原告が本件ローン契約等に基づき借主又は他の貸主から入手するすべての情報は、入手後直ちに被告に提供する旨の定めがあるところ(当事者間に争いがない。)、次のとおり、原告は右約定に基づく報告義務を履行しなかったので、被告は、平成五年六月一六日に原告に到達した書面により本件保証契約を解除する旨の意思表示をした。

(一) 原告は、WLPがDに対して三六八〇万ドルのローンを供与していたという事実を知りながら、被告に報告しなかった。被告は、右事実を原告から交付された平成四年五月一三日付けの文書ではじめて知り、驚いた。

(二) 右文書には、「WLPの本件プロジェクト用地の借地権取得に際し、旧借地人から起こされた訴訟に関し、Dから原告に七五万ドルのLCが差し入れられていたが、DからこのLCを解除して欲しいとの依頼があった」旨の記載があるが、被告は原告から、右のような訴訟が存在すること、DからLCが差し入れられていたことなどについて全く報告を受けていなかった。プロジェクト用地の借地権取得について訴訟が未解決であったことは、貸金の回収にも重大な影響を及ぼす事実であり、被告は、本件保証契約の締結前にこの事実を知らされていれば、本件プロジェクトに参加することは絶対になかった。

(三) 原告は、平成五年五月六日付けの報告書において、「ゼネコンが物件への先取特権(メカニクス・リーン)を付ける事態が生じると弊社が判断する場合には、……リーンを回避する」とし、これについては、「改めてご相談致します」としていたが、その後、何らの相談もなく、平成五年五月二一日付けの報告書で、ゼネコンが「五月一二日付けでメカニクス・リーンの申請手続をとった」旨を事後報告された。

(四) 原告が被告に対して当然に報告すべき建築の進行状況、ローンの消化率、キャッシュフロー等の報告を怠ったため、被告は再三督促し、原告は平成三年五月二一日に被告に交付した報告書で、今後は三か月ごとに報告する旨を約したにもかかわらず、実行しなかった。

(五) 本件保証契約締結の前提として、プロジェクト物件の販売については伊藤忠商事が積極的に取り組むという説明がされたが、伊藤忠商事は自らの販売活動をほとんど行っていなかった。被告は、伊藤忠商事の営業努力に疑問を感じたので伊藤忠商事と直接の話合いを試みたが、伊藤忠商事は一切の説明をせず、本件プロジェクトから手を引いているかのような反応であった。原告は、伊藤忠商事のこのような変節を知っていながら、被告に全く報告しなかった。

四  原告の主張

1  被告が主張するようにE及びFが被告に対して本件プロジェクトに参加するように強く勧誘したこともなければ、本件プロジェクトにリスクがないなどと述べたことはない。被告は、自らの判断で本件保証契約を締結したものである。

2  被告が主張する解除原因に対する反論は別紙「原告の反論」≪省略≫に記載のとおりである。

第三  争点(被告主張の当否)に対する判断

一  本件保証契約の詐欺による取消しの主張について

被告は、本件保証契約締結当時(平成二年九月二八日)、ハワイオアフ島の高級住宅地では高額物件の売れ残りが急増していたにもかかわらず、原告はこれらの事実を秘匿し、原告は数年前から伊藤忠商事が推進する大型不動産開発案件に対する融資業務を積極的に展開し非常にうまく行っている、本件プロジェクトは全く心配のないもので極めて危険性の少ないものであるなどと説明し、被告を欺罔して本件保証契約を締結させたものであると主張する。

なるほど、原告が被告に交付した本件プロジェクトの説明書(≪証拠省略≫)には、伊藤忠商事が参加ないし融資参加したコンドミニアム(ホノルルパークプレイス四三七戸、ナウルタワー三〇四戸)がすべて即時完売されたこと及び本件プロジェクトが極めて事業性の高い優良物件であることなどが記載されているが、これらの記載が虚偽であると認めるに足りる証拠はない。また、被告が指摘する新聞記事(平成二年一二月二七日付け日経産業新聞。≪証拠省略≫)も、ハワイにおける高級住宅の売れ行きが振るわなくなったことを報じているものの、「日本の関係者でも『これまで高騰を続けてきた住宅市場が一つの転換点を迎えたのは確かだが、世界有数のリゾート地であるハワイの市場価値は依然として大きい。日本からの投資も単に値上がりだけを狙った投機は衰えても、ハワイに物件を持っていたいという地に足のついた商談は増えるだろう』(G氏)との見方は強い。」との観測を伝えているのであって、本件プロジェクトが全く成功の見込みのないものであったということはできない。

前記認定のように(第二の一)、本件プロジェクトは損失を被る結果に終わったが、その主たる原因は、いわゆるバブル経済の崩壊に伴う急速な不動産景気の衰退に基づくものというべきであって、本件保証契約の締結が原告の欺罔行為によるものとする被告の主張は、これを認めるに足りる証拠がなく、採用することができない。

二  原告の債務不履行(報告義務違反)に基づく本件保証契約解除の主張について

1  被告は、WLPがDに対して三六八〇万ドルのローンを供与している事実を知らなかったと主張するが、右事実は本件ローン契約(≪証拠省略≫)第六条(w)に記載され、被告は本件ローン契約の内容を確認して本件保証契約(≪証拠省略≫)を締結したのであるから(本件保証契約第一条)、被告は右事実を知らなかったものということはできない。なお、本件ローン契約書は、草稿の段階から被告に送付されている(≪証拠省略≫、証人Cの証言)。

2  被告は、WLPの本件プロジェクト用地の借地権取得につき旧借地人から起こされた訴訟が存在したこと、また、右訴訟に関してDから原告に七五万ドルのLCが差し入れられていたことなどを知らなかったと主張するが、右訴訟の存在は本件ローン契約(≪証拠省略≫)第五条(m)に記載されているから、前記同様、被告は右事実を知らなかったものということはできない。

原告が主張するように、原告は平成二年六月以前に右訴訟の存在を知り、弁護士に相談したところ、WLP等に対する請求が認められる可能性は極めて低いとの情報を得たが(≪証拠省略≫)、念のため、訴訟の結果発生する与信団及び保証人団が被る損失の担保として、DにLC(銀行保証書)の差入れを要請し、Dはこれに応じて平成二年一二月一九日ハワイ銀行発行の七五万ドルのLCを原告に差し入れた。その後、WLP等が勝訴し、控訴期限である平成四年四月二七日の経過後、原告は右LCの解除に応じたものである(証人Cの証言、弁論の全趣旨)。

3  メカニクス・リーンの申請(WLPが建設業者に工事代金の支払を遅延したことにより建設業者が先取特権の申請をしたもの)からその取下げに至る経緯及びこれに関し原告が被告に対して提供した情報については、別紙「原告の反論」第五項記載のとおりであって(掲記されている証拠のほか、弁論の全趣旨によって認める。)、原告に報告義務違反があるということはできない。

4  被告は、原告が建築の進行状況等の報告を怠ったと主張するが、原告が被告に対して行った報告の状況は、別紙「原告の反論」第六項記載のとおりであって(掲記されている証拠のほか、証人Cの証言及び弁論の全趣旨によって認める。)、原告に報告義務違反があるということはできない。

5  被告は、伊藤忠商事が販売努力を行っていないにもかかわらず、原告は被告に対してそのことを報告しなかったと主張するが、伊藤忠商事が行った販売努力は、別紙「原告の反論」第七項記載のとおりであって(掲記されている証拠のほか、弁論の全趣旨によって認める。)、その前提事実を認めるに足りる証拠はない。

6  以上のとおりであって、被告が解除原因として主張する事実を認めるに足りる証拠はないから、被告の主張は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。

第四  以上の次第であるから、被告の主張は理由がなく、前記のとおり請求原因事実が認められるので、原告の本訴請求はこれを全部認容すべきである。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 大内俊身)

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